Kluson(クルーソン)ペグといえば、1925年にアメリカ・シカゴで創業された老舗ブランドで、GibsonやFenderなどの名門ギターに採用されてきた伝統的なパーツメーカーです。
そのため「Kluson=アメリカ製」というイメージが強いですが、実は現在市場に出回っている一部のKlusonペグは日本製だったりします。
今回は、Kluson製「JAPAN」刻印入り “Gibson Deluxe ダブルライン・オーバルメタルボタン”ペグ について、背景や仕様を写真を添えて紹介してみたいと思います。
交換などを考えておられて、サイズが気になる方は、目次「寸法」からどうぞ。
日本製Klusonペグの背景

Kluson社は1981年に倒産しています。
現在の「Kluson」ブランドは、「WD Music社 Kluson」と「Göldo Music社Kluson」の2つが存在し、日本国内で流通しているのは主にアメリカ「WD Music」製。
アメリカ「WD Music」 Kluson
現在のKlusonは、1994年にWD Music社が商標を取得し復活させました。
90年代後半にWD Music社がKlusonブランドを復活させた際、品質管理の観点から日本の工場(Gotoh社)で製造されるモデルが登場します。
そのため、復刻・再生産モデルの一部が日本で製造されているのです。
今回紹介する「Gibson Deluxe 2列刻印・オーバルメタルボタン」は2000年代製Gibson「Les Paul standard」から取り外した「復刻ペグ」。
大袈裟なタイトルで始まりましたが、結論から言うと中身はGotoh製ということで、珍しいものでもなさそうです。
ヨーロッパ「Göldo Music」Kluson
ヨーロッパ版のKlusonは、アメリカ版とは商標も製造元も異なるという、少し複雑な背景があります。
ヨーロッパ限定の商標展開
Göldo Music社(ドイツ)は、Klusonの商標をヨーロッパで所有しており、アメリカのWD Music社とは別ブランドとして扱われています。
アメリカではWD Music社がKluson商標を所有しており、ヨーロッパ版とアメリカ版は相互に輸出・販売できないというルールがあるほどです。
ドイツのGöldo Music社
ヨーロッパでは、Klusonブランドの商標をGöldo Music社が管理しています。
◆Duesenbergなどのブランドも展開
Göldo MusicはKluson以外にも、Duesenberg(ギター)、Roger(ピックアップ)、Diego(ハードウェア)など複数のブランドを展開しています。
製造は日本のGotoh社が担当
ヨーロッパ向けのKlusonペグは、日本のGotoh(後藤ガット)社がOEM製造しており、裏面に「Japan」刻印や「Kluson刻印+Japan刻印」があるモデルも存在します。
ヨーロッパ版は独自のパッケージデザインで、仕様も異なり、Göldo Musicの流通網を通じて販売されています。
Göldo Music社の公式サイトでは、Klusonの「Traditional Line」や「Supremeシリーズ」など、ヴィンテージ仕様から現代的なモデルまで幅広く紹介されています。
つまり、ヨーロッパKlusonは「Kluson刻印+Japan刻印」という、ヴィンテージ感と日本製の精度が融合したレア仕様といえます。
高精度・高品質な日本製パーツとして
以上のことから、どちらの「Kluson」も日本製モデルは、Gotoh(後藤ガット)社が請け負っているといえます。

Gotoh製ペグの信頼度の高さは周知の事実なので言うまでもなく、日本製のKlusonペグは、オリジナルのヴィンテージ仕様を忠実に再現しつつ、現代のギターにも対応できる精度と耐久性を持ってるといえます。
「Made in Japan」表記があるモデルも存在
特に国内代理店経由で販売されている製品には、日本製であることが明記されているものもあります。
ダブルライン・Gibson Deluxeペグとは?
「Gibson Deluxe ダブルライン」の特徴と背景をまとめました。

- 2列刻印(ダブルライン)
ギアカバーに「GIBSON」「DELUXE」と2列で刻印されたスタイル。1963年後期〜70年代初頭にかけて使用されました。 - ダブルリング(2コブ)ノブ
ペグボタンの根元にリングが2つあるタイプ。これも同時期に登場し、見た目のクラシック感が魅力です。 - ブラスポスト仕様
弦を通すポスト部分が真鍮製で、音の立ち上がりが良く、クリアなトーンが得られると評価されています。 - 復刻モデルも存在
現在ではKluson社やMontreuxなどから、当時の仕様を再現した復刻ペグが販売されており、ヒストリックモデルのアップグレードにも人気です。

(写真右は70sのオリジナルクルーソン)
「Gibson Deluxe 2列刻印・オーバルメタルボタン」
先述のとおり、今回紹介している「Gibson Deluxe 2列刻印・オーバルメタルボタン」は2000年代製Gibson「Les Paul standard」から取り外した「復刻ペグ」
「JAPAN」刻印が入ってはいますが、「WD Music社」「Göldo Music社」どちらのものかは私には断定できません。

使用されていた年代と背景
オリジナルの「ダブルライン・メタルボタン」タイプのGibson Deluxeペグは、1969年〜1975年頃にかけてGibsonの一部モデルに採用されていた仕様です。以下にその特徴と年式の目安をまとめます
- 1969年頃に登場
「GIBSON」「DELUXE」の2列刻印(ダブルライン)と、金属製のオーバルボタンが組み合わされたペグがこの時期に導入されました。 - 1970年代前半まで継続使用
特に1970〜1975年製のLes Paul DeluxeやSGなどに多く見られます。シリアルナンバーやヘッド裏の刻印で年式を特定できます。
主な特徴(ほぼ2回目の紹介)
- 2列刻印(ダブルライン)
ギアカバーに「GIBSON」「DELUXE」と2段で刻印されているスタイル。Kluson社がGibson向けに特注で製造したものです。 - オーバル型メタルボタン
プラスチックではなく金属製の楕円形ボタンで、重厚感と耐久性があり、70年代以降のモデルに多く見られます。 - ブラスポスト仕様
弦の立ち上がりが良く、クリアなトーンが得られると評価されています。 - 復刻モデルも多数あり
MontreuxやWD Musicなどから、当時の仕様を忠実に再現した復刻版が販売されており、ヒストリックモデルのアップグレードにも人気です。
ちなみに、エイジド加工(レリック)されたモデルもあり、見た目の風格を保ちつつチューニングの安定性を向上させることができます。
寸法:ポスト径
※実測値・目測なのでカタログとは異なるかもしれません。

現行品とも仕様が異なるかもしれないので、以下は取り付けを検討している方の参考程度に。(2025年7月時点)
- ポスト径:約6.3mm (たぶんカタログでは「1/4インチ」で6.35㎜)
寸法:ポストの高さ

- ベースプレート~弦穴中心:約19.5㎜
- ベースプレート~ポストトップ:24.5㎜
重量

- 重量:1つあたり「25.1グラム(ビスを除く)」
おまけ:70s 2列刻印・2コブペグと

正解はわからないですが、復刻ペグ(左)のパッと見で気付く異なる特徴は4点。
- ベースプレートの縁
- 弦穴が細い
- 弦を巻き付けるクビレが浅い
- ポスト先端が少しスリムで、どちらかと言えば、どちらでもないけど60年代寄りのデザイン。