今回は、私が愛してやまない「Gibson “The Paul”」の魅力をただ書き連ねるだけの記事です。
70~80年代、Gibson社。
“暗黒期”や“迷走期”と揶揄され、ともすれば一部からは歴史の闇に葬り去られるのではないかというほどの言われようで、いたたまれなくなる、所謂「Norlin期」
しかし果たしてそうでしょうか?
以下は当記事「Gibson “The Paul”」の要点です。
- 薄い塗装
- 理想的な重量
- 厳選された木材
- 材を活かすピックアップ
字面だけでもプレイヤー目線の魅力が詰まっていると思いませんか?
Norlin期の“迷走”を逆手に取ったかのような“The Paul”は、むしろ「必然の銘器」といえます。
少しマニアックで、興味の無い方は勿論のこと、“vintage guitar”に造詣が深い方ほど目もくれず通り過ぎていかれるような中途半端な話題。
多様性の時代。あまり語られることのないNorlin期だからこそ、“used”・“birthday year”・“vintage”に興味を持ち始めた方の選択肢に「意外性」が加わるかもしれません。
オールドギター入門機で、レスポール系としては肝心な特徴“以外”が揃ったようなイレギュラーな系譜です。
ギター初心者の方には「各部の名称」や、改造、次にギターを購入する際の「着眼点」くらいとしてなら参考になるかもしれません。
“The Paul”の詳細を添えることにより「メリットだらけの魅力溢れる隠れた銘器」と感じていただけるよう紹介できればと考えています。(もちろんデメリットもあります)
また、私にとっての“The Paul”がそうであるように、いつか「あなただけの未だ見ぬ銘器」に出会う一助になれれば光栄なことです。
少し長くなりますが、お付き合いいただければ幸いです。
はじめに
Gibson社のフラッグシップモデルであり、世界的に最も有名なエレキギターの一つと言っても過言ではない”Les Paul model”。
代表的な「Les Paul」を冠するバリエーションには、“standard”をはじめ、上位機種の“custom”やミニハムバッカー搭載の“Deluxe”などに分類されます。
更に年式による仕様変更やグレード、スチューデントモデルの“junior/ special”といった派生モデルなども含めると、レスポールシリーズだけでも数え切れないほどのバリエーションが存在することになります。
現在でこそ別シリーズ扱いですが、60年代の“SG”も“Les Paul”なのは有名な話です。
Amazonでの検索結果:“Gibson Les Paul“
レスポールシリーズに限らず、130年を超えるGibsonの長い歴史の中では、特定の年代にごく短期間のみ製作された、“銘器”か“迷器”か?と問われると大きく評価を二分するほどの個性的で魅力溢れるモデルも数多く存在します。
それは目立たず埋もれてしまっただけかもしれないし、時代を先取りしすぎたデザインやスペックかもしれない。
王道をゆく“Gibson製”でなければ許容されたかもしれない挑戦的で実験的な試行錯誤の産物もそこにはあったかもしれません。
今回紹介する“The Paul”もその一つ。
時代の波に翻弄され、抜本的な経営改革を余儀なくされたGibsonの“Norlin Era”(ノーリン期)と呼ばれる歴史の節目。
その激動の10年の内に生み出されたギターではありますが、Les Paulシリーズにおいて一際異彩を放つ隠れた銘器といえます。
The Paulの概要
製造期間は1978年から1982年と短命に終わったモデルで、スチューデントモデルの位置づけながら、高級材とされるエボニーと、エレキギターではあまり使用されることのないウォルナットを採用しているのが最大の特徴です。

同時に発売された兄弟機に“The SG”があります。
(同時期に販売された“The 〇〇”でも、“The Les Paul”や“The Ⅴ”とはコンセプトが異なりそうです)
1981年からは“Firebrand”シリーズとなり、“335-s” (ES-335のソリッドボディ化モデル)もなぜか同シリーズの兄弟機となります。
(“L5-s”や“L6-s”のような“〇〇-s”は、ソリッドボディ化モデル)
マホガニーボディとなった後継機のFirebrand /The Paul Deluxeは1986年まで製造されました。
1996年には“The Paul II”が発売されましたが、こちらは“Les Paul Studio”に近い見た目の印象。
そして40周年となる2018年には復刻が発表(発売は19年)されたほどなので、実は有名だったのかもしれないモデルです。
The Paulの基本SPEC

※重量は個体差あり。
購入時の弦ゲージ:0.10~0.46
Amazonでの検索結果:“ギター 弦“
ノーリン・Gibsonの主な特徴/変更点
Gibson社がECL/ノーリン傘下にあった1969年(もしくは74年)から1986年頃までを“Norlin Era”「ノーリン期」や「ノーリン・ギブソン」と呼びます。
“The Paul”を、もといノーリン期Gibsonのギターを語るうえで避けて通ることのできない特異性を、補足情報として先に説明しておきます。
それは『音楽シーンの変化と、工業化への移行期、ノーリンGibsonは経営再建や資材の枯渇といった制約を背景に、レスポールをはじめ多くのギターは様々な変更を余儀なくされた』ということ。
以下はその状況下で施されたレスポールの主な変更点。
- ラージヘッド化【規格の統一】
- 構造上、衝撃に弱いヘッドストックをヴォリュートで強化【弱点の強化】
- 折れやすいマホガニー・ネックを堅いメイプルに変更【剛性アップ】
- ネックのねじれ対策に、1ピースから3ピースへ変更【品質改善】
- メイプル材をマホガニーで挟んだ「パンケーキ・ボディ」構造【良質材の活用】
Les PaulをGibson社のフラッグシップ(最先端)モデルと位置付けるなら、これら変更は一概に“改悪”や“迷走”とは言えません。
弱点の克服や、当時隆盛を極めていたROCKシーンがHR/HMへと移り変わるトレンドに呼応したものでもあります。
自分たちのおかれた環境下で可能な限り出来るだけのことをしたのであれば、方針としては合理的な判断だったともいえます。
2019年以降のGibson
現在のGibson製品は、基本的には以下の3つに分類されるようです。
- 「Custom shop」
- 「The Original Collection」
- 「Modern Collection」
- Murphy Lab:「バースト期の再現」
- Historic collection:「年式による特徴を復刻」
Amazonでの検索結果:“gibson custom shop“
- standard:伝統的仕様(~2008)⇒モダン仕様(~2019)⇒“traditional”廃止に伴い仕様見直し
- ⇒The Original Collection/Modern Collection(2019~)
- standard (The Original Collection):伝統的仕様(2019~2025年6月時点)
- modern(Modern Collection):現代的仕様
- traditional:伝統的仕様(2008~2019 廃番)
Amazonでの検索結果:“Gibson Les Paul“
参考個体
今回紹介するにあたり参考にした“The Paul”は、シリアルナンバーから1979年製の個体と判断。
POTデイトやピックアップ裏は未確認です。
年式により微妙に仕様が異なるかもしれませんので参考程度に。
※当個体は、エスカッションとストラップピンを交換しています。サドルとトグルスイッチのキャップ(クリーム→黒)も変更したかもしれません。

後述しますが、以下は“The Paul”の基本的な仕様。
- ウォルナットネック&ボディ
- エボニー指板
- ラージヘッド
- 突板なしヘッドストック
- ボリュート
- ドットインレイ
- バインディング無し
- ボディコンター
- セットネック
- ナチュラルフィニッシュ
- オープンピックアップ
廉価モデルとして誕生した“The Paul”
作業面でコスト削減とみられる仕様もありますが、使用されているパーツ類は廉価ではありません。
そして、廉価モデルだからと作業工程を減らすことが、必ずしも楽器としてデメリットに働くとは限らないかもしれないことを、“The Paul”のもつ魅力から伝えられればと思っています。
The Paulの秘められた可能性
ボディシェイプ自体は、ノーリン初期1974年頃に発売された姉妹機“S-1”や“マローダー”から、末期1986年の“SONEX180”や“invader”まで引き継がれており、ノーリン期を代表する型の1つと言えます。
この型で使用されている素材は、アルダー・メイプル・マホガニー・ウォルナット・マルチフォニックと様々です。

ボディシェイプ以外で、この型のほぼ全てに共通する、最大級に驚愕的な特徴として、ネックのジョイント方法が挙げられます。
この型は、従来のGibson社の伝統であるセットネックではなく、ライバルFender社の特徴ともいえるジョイント(ボルトオン/デタッチャブル)ネックの仕様を採用しているのです。
流行もあり、この節操がなく映ってしまうところがノーリン期特有の違和感を象徴しており、こういった点の積み重ねが賛否の割れるところでもあり、好きな人には狂おしいほど堪らない要素であるのかもしれません。
コスト削減と合理化、Fenderユーザー層の取り込み/新規開拓といった狙いはもちろんのこととは思いますが、私はこの型に関して、木材の選定や仕様を吟味する「実験素体」の側面もあったのではないかと考えています。(根拠はありません)
“The Paul/The SG”は、高級材とされるエボニーとウォルナットで製作されています。
ボディ&ネックにウォルナット、指板にエボニーといった構成は、おそらくGibsonのエレキギターでは後にも先にも存在せず、他社でも限定的にしか作られていないような異端の仕様です。
“高級な木材”が使用されていることに目が行きがちですが、この組み合わせはベースではよく見かける構成であることを踏まえると、明らかに狙った音のある、目的を持った選択であると考えられます。
勉強不足なだけかもしれませんが、同時期に発売されたGibson製のベースにこの構成がないのが逆に不思議なくらいです。

さらに、このボディシェイプで唯一“The Paul”だけが“Gibsonらしさ”の象徴であるセットネック仕様の王道スタイルに戻されたことを考えると、Gibsonは“LesPaulの系譜”として、ひとつの完成形と位置付けたのではないでしょうか。
都合のいい解釈で、愛情の暴走が論理破綻から目を逸らしていますが、何か確信めいたもの、勝負に打って出る試金石的価値や、内に秘めた覚悟といえるものがあったのではないかと、思いを巡らせてしまい魅力を感じずにはいられません。
邪推と希望的観測と自問自答にまみれていますが、そのような直感的なものが自分自身の価値基準・判断基準だと信じてやまない当サイトです。
“Standard”はマホガニーが安定供給され始めるまでの繋ぎの期間だけの仕様なので、割に合わなかったのか、マホガニーのほうが汎用性の高い音/優れた音と判断したのか、単なる思いつきか、当時の成否の判断はわかりかねます。
ただ実際に触れてみると、スチューデントモデルであっても、根底には“バースト”や“custom”といった“音”を意識した明確なイメージや、“道具”としての設計思想をもち、目指すべき方向性を模索するクラフトマンシップを感じられるギターと言えます。
他社ウォルナットボディ
以下は、ウォルナットボディをもつエレキギターを製造したことのあるギターメーカー。
モデル名・型番は不明なものあり。
- Fender :stratocaster・telecaster
- PRS:CUSTOM24・Private Stock・Employee guitar・SE CUSTOM
- Rickenbacker:330W・360W
- Bill Lawrence:BT2/BT2E
- SCHECTER USA
- KAY:titan
- ARIA ProⅡ
- MOON
- Deviser
※『ウォルナット“カラー”』という塗装のギターが多く存在するので、混同なさいませんよう。
個性を最大限に発揮する塗装
ウォルナットボディの“standard”は、基本的に“アンティーク・ナチュラル”カラー一択で、仕上げは、“サテンフィニッシュ(艶消し)”と“グロスフィニッシュ(艶あり)”の2種。
カタログなどの資料は手元にないので思い込みですが、初期製造分は、上記画像のような極薄ラッカーの“艶消し”ナチュラルカラーだけで、“艶ありのアンティーク・ナチュラル”は“deluxe”発表後の80年製以降に加わった仕様だと思われます。
“Firebrand”以降は、“deluxe”で採用された“silver burst”や“gold burst”を吹かれた“イレギュラーなstandard”も稀に存在するようです。
ギターに施される塗装の目的は、主に“美観”と“木材の保護”ですが、ここにもコスト削減・作業工程の削減の節が見られ、出荷に際しての保護だけを目的としているのではないかと思えるほど、最低限平滑になる程度の極薄ラッカーで仕上げられています。
私は、楽器には「音を発生させる装置」と「音を奏でる道具」の2つの観点があり、音は両側面からアプローチしたトータルバランスであると考えています。
指の摩擦だけでエスカッション周辺の塗装が剥げたとみられる個体が中古市場に多数出回るほど、ダメージに弱いデメリットはありますが、「楽器本体の材質は音と関係し、(厚い)塗装は楽器元来の音質を阻害する」という説を支持するなら、道管を感じられるほど薄い塗装は、塗膜による音質への影響を極力抑えることに繋がります。
つまり、ただでさえ『レアなウォルナット&エボニーという個性を最大限感じることができる』のです。
音質改善を謳いリフィニッシュや塗装を剥ぐなどの強引な手法もあります。
入門用新品激安ギターのように木材の素性がわからない場合は、逆に分厚く硬い塗膜で固めるほうが出音に対してメリットがあるかもしれません。
ノーリン期の品質低下を問題視する声もありますが、手間と時間と心理的負担のかかる塗装作業を軽減し、尚且つ音が良くなる結果に繋がるのなら、最初から「最低限のことだけで、余計なことはしない」という選択も結果的には素晴らしく理にかなっていると言えます。
「自分の音」以外に正解はありませんし、この文章自体が私以外には「他人の意見」でしかないので恐縮ですが、生鳴りを含め、弾き心地から受ける印象は、土台がしっかりとしており、鈍器を堅いものに叩きつけるような直線的に前方へ向かう音だと感じます。
※ここで言う「生鳴り」は、「アンプに繋がない弦だけの音」
ボディ
- バインディング無し
- ボディコンター
- ナチュラルフィニッシュ
- Nashvill T-O-M bridge
- 刻印ナンバードPAF
- オープンピックアップ
- 2Volume&2Tone
- 3way toggle switch
ウォルナットボディの謎
ウォルナットで製造されたフラットトップのソリッドボディで、バインディングはありません。
エレキギターでの使用は珍しいウォルナットですが、家具や装飾などでは幅広く利用されている木材で、木目の美しいものは高級品として扱われるようです。
ベースのボディやアコースティックギターのネック、その他音響機器などに部分的であっても使用されている実績があるので、決して楽器には不向きな木材とも言い切れないです。
音響特性は、以下のように言われています。(諸説あります)
- 明瞭で輪郭がシャープ
- 暖かく、柔らかい音
- 中低域を中心に全音域でバランスの取れた響き
- 音の立ち上がりが速い
- アタック感が強い
ハカランダも規制前は一般的な木材であったように、現在は高級材とされていても開発当時と金銭的価値が同じとは限りません。樹種やグレードもあります。
ただ、もし高級材であるのなら、なぜステューデントモデルに、突発的に、しかも単発で、惜しげもなく採用したのかが『The Paul 最大の謎』とも言えます。
だからこそ「実験素体」と仮定しました。
偶々工場に転がっていただけの気まぐれかもしれないし、代替となる木材を模索するにあたり、一先ず用途を絞らなければ、広義で木工/家具職人の業界ではウォルナット(アメリカン・ブラック・ウォルナット)は身近な樹種だった可能性もあります。
私には知る由もないですが。

画像の個体は4ピースボディですが、sns等では1Pや2Pのものも稀に確認できます。
色も木目もこの個体はあっさりとしていますが、黒いボディに豪快な木目をもつ高級家具のような個体も存在し、そちらは比較にならないくらい力強く美しいです。

ウォルナットでも杢が浮き出ることはあるようです。
「beveled contour」の効果

トップ材の貼られていないフラットトップ仕様ではありますが、非対称に施された流麗な面取り加工が特徴的で、抱えやすさや演奏性の向上、軽量化にも一役買っています
もし、ボディ形状が音質に影響するのなら、疑似的にアーチトップの効果を狙っていたのかもしれません。
球体に近づけば響きが良くなる。反射が少なくクリアな音質。+ ローズウッドとマホガニーの間といわれる“ウォルナットの音響特性”
“L-6s”などはここまで深いコンターではないので、強引にこじつければ、先述の“335-s”が「Firebrand」に組み込まれた理由付けにもなるかもしれません。

ボディトップには、ボディサイド低音弦側・高音弦側共に“SG”でいうところの「ベヴェルドコンター」のような面取り加工が施されています。
ボディバックにも、“LesPaul Jr.”でみられるような“ベリーカット”や“バックコンター”、“タミーカット”などと呼ばれる面取りが施されています。

上記のように、バランスよく施されたコンターは、デザイン面だけでなく扱いやすさも考慮して設計されていることが見て取れます。
コンター加工は本来であれば廉価モデルには必要のない工程であることから、ノーリン期は単にコスト削減と利益だけを追求していたというわけでもなさそうです。
Amazonでの検索結果:“Gibson SG“
理想の重量
重いイメージのウォルナット材ですが、当個体は“3.8kg”で、エレキギターとしては取り回しのしやすいとされる重量に収まっています。

そして、レスポールの理想とされるオリジナルバーストが『重量“3.8±0.3kg』あたりとすると、レスポールシェイプとしてもちょうどいい重さ。
重量も、狙った音があれば音質の傾向を知る上で参考になる要素の1つと言われています。
Hardware
ブリッジ
ブリッジには、“Nashvill type Tune-O-Matic bridge”が採用されています。
※2019年頃からの仕様変更に伴い、ポスト間ピッチなどの規格も変更された可能性がございます。
購入前に必ずサイズ確認をしてください。
この個体はサドルを変更済み。
Amazonでの検索結果:“KTS チタンサドル“
また、ストップ・テールピースは軽量だったので、デフォルトなら“アルミ製”ということになります。
仕様なのか改造なのかは定かでないですが、「Wide Travel Bridge(通称:ハーモニカブリッジ)」の個体も存在するようです。

“Nashvill T-O-M”と“Wide Travel Bridge”はポスト間距離も含め規格が異なるので、個人の改造ではなく工場で余ったパーツを流用した可能性もあり得ます。
“Nashvill type Tune-O-Matic bridge”が製造・使用されたのは1975年頃から。
78年から製造された“The Paul”とはタイムラグがありますが、同ボディシェイプで直前まで製造されていた先代姉妹機種(74~78年)“マローダー/S-1”は、むしろハーモニカブリッジのイメージが強いです。
同じ製造ラインの78年製・最初期のプロトタイプ個体であったり、カラマズー工場製の判断基準となったりするのでしょうか?
control
単純に作業工程を減らす作戦で偶然の産物かもしれませんが、ピックアップセレクターはテールピース付近に配置されており、レスポールユーザーの一部で局所的に頻発する、ピッキングストロークによる誤作動を防ぐ位置取りとなっております。
toggle switch
3way toggle switch
“白いLes Paul special”のように“大きなアーム”を付ける場合は、トグルスイッチを移設する必要性が出てきそうです。

Speed-Knob
2Volume&2Toneには、内側にエンボスの入ったスピードノブ。
Assembly

電装系レイアウトは以下のとおり。
- Humbacker×2
- 2Volume&2Tone
- 3way toggle switch
エスカッションは旧代理店時代のパーツへと変更済。
ピックアップ【刻印ナンバードPAF】
ネック側・ブリッジ側共に、74年から82年頃に採用された所謂「刻印ナンバードPAF」が搭載されています。
裏を見れば製造日がスタンプされている可能性もありますが確認していません。
ここでは「PAF」についての言及は避けます。
Amazonでの検索結果:“Gibson pick up“
「刻印ナンバードPAF」の仕様
- オープンタイプ(Non-Covered)
- ポッティングなし(Non-potted)
- 黒ボビン
- 7.8~7.9kΩ
「刻印ナンバードPAF」はカバードであってもポッティング処理(ロウ漬けによるハウリング対策)はされていないそうです。
オープンタイプ・ピックアップもコスト削減とみられる仕様ですが、音質的にはリミッター解除のような恩恵もあるので、デメリットとも言い切れません。
そもそもカバード・タイプが、コイルの隙間を埋めないNon-potted仕様だそうですし、カバーの振動もハウリングを発生させるリスクになるのなら、むしろ「見た目以外での必要性を感じない」というのもひとつの考え方。
※純正でもサードパーティー製リプレイスメントパーツでも、カバード・タイプ/オープン・タイプ、potted/non-pottedはピックアップの“いち仕様”として一般的に広く出回っているものです。
品質及び性能に優劣をつけるものではありません。
インスパイアやオマージュの類ではありますが、Gibsonから復刻されているようです。
Front=Neck=Rhythm
フロントピックアップとは、ヘッド側に配置されたもの。
Rear=Bridge=Treble
リアピックアップとは、ブリッジ側に配置されたもの。
Front Pick-up (Neck Pick-up)

ボビン3・4弦間に刻まれた“T”字から、通称「T-top」や「T-フロント」「T-backer」とも呼ばれています。
Rear Pick-up (Bridge Pick-up)

基準となる共通認識がないので説明しにくいですが、クリーントーンでは華美なピックアップ特性を発揮せず、素直で素朴・繊細に出力する印象です。
別のT-topでは直流抵抗値が“7.8~7.9kΩ”だったので、Gibsonのピックアップの中でも取り立ててパワーが弱いとは言えず、明瞭な輪郭をもつ音で決して貧相でもありません。
ピッキングニュアンスや、ギター本体がもつボディの特性をそのまま出音に変換するタイプのピックアップのようで、誤魔化しがきかないと認識してしまうと、自分の粗が見える怖さや、扱いにくさを感じてしまうやもしれません。
もしかすると私が感じた“素直・素朴・繊細”という表現は、ウォルナット&エボニー/フラットトップの特性(硬い・タイト・反応が速い)からくるもので、アーチトップのマホガニーやその他の木材なら全く異なる評価・表現になるかもしれません。
カバード/オープン・ピックアップ
カバーの有無で、音質の傾向は確かに変化します。
ただその変化は劇的なものではなく、音作りにおける扱いやすさの違い程度であり。過度な期待は禁物です。
カバードタイプ・ピックアップの特性
同一モデル/オープンタイプと比較した一般論です。
- 効果:高周波が減少する
- レスポールの代名詞ともいえる、所謂「太く甘い」音
- ウォーム・ふくよか:艶っぽい
- ダーク・少し籠った響き:渋い
- フロント・ピックアップ&指板寄りのピッキング・ニュアンス
- volume/toneコントロールは“色気の変化”
オープンタイプ・ピックアップの特性
同一モデル/カバードタイプと比較した一般論です。
- 効果:高周波を豊かに拾う
- 煌びやか
- ナチュラル
- タイトでブライト引き締まり感やブライト感明るく
- リア・ピックアップ&ブリッジ・サドル寄りのピッキング・ニュアンス
- volume/toneコントロールは“派手さの変化”
S©ALETONE的・妄想似非科学【ボディ編】
coming soon
はじまりは『Gibsonが狙ったかもしれない音』について「材と音の関係」から何か言語化できないかと思っただけなんです。
結論ありきの論法であっても“自分の音”を前提に言語化・数値化・可視化できればと。
- 当サイト独自の定義づけをすることがあります。
- 勉強の苦手な素人のすることなので、そもそもが論外です。
- 計算式は的外れ。
- 根拠はないものと思ってください。
いつか以下の内容で「音の言語化を“試みた”」だけの未完成の表を、リンクとして貼る予定ですが、私ごときに言語化できる程度なら誰も悩まないので「S©ALETONE的・妄想似非科学」は毒にも薬にもならない「無」です。
- 硬度・比重・密度と音響特性
- 重量・体積と音響特性
- Burst:ハードロック・メイプル+ホンジュラス・マホガニーの合板
- 54年製“Les Paul Custom”:ホンジュラス・マホガニー
- The Paul:ウォルナット
- Burstの理想:“3.8㎏前後”
- ThePaulの重量:“3.8㎏前後”
何をかいわんや、恋は盲目です。
ヘッドストック
- デカヘッド
- トラスロッドカバー
- ロトマチック
- Grover製マシンヘッド
- キー・ストーン
形状
Large Head Stock
先述のとおり、ノーリン期の特徴である「ラージヘッド」仕様。
ラージヘッドはノーリン期に“統一規格となったこと”が特徴として広く知れ渡っています。
しかし私の記憶違いでなければ、ダイヤモンド・インレイに目を奪われ、バインディング・マジックで見落とされがちですが、実は既に「1954年製“Les Paul Custom”」の時点で上位機種の象徴としてラージヘッドは存在していたはずです。
あまりヘッドストックに使う表現ではないけれど、分割線から“3Pネック+両サイドの耳貼り”の5ピース。

個人的に“ラージヘッド”の呼称はFenderのイメージで、Gibsonの場合は“デカヘッド”と呼ぶ印象を持っているのですが、どこから影響を受けたのかは自分でも謎。
オープンブック・ヘッドストック
Gibsonの特徴の1つでもある、本を開いたような左右対称のカーブを描く「オープンブック・ヘッドストック」

ヘッドストック【表面】
突板(化粧板)なしのヘッドストック。
Gibsonのエレキギターで、オープンブックのヘッドトップに黒い化粧板が貼られていないモデルは珍しいかもしれません。
後継機「deluxe」になると“Firebrand”であっても突板の貼られたものがあります。
※この記事を書くまで気にしたこともなかったですが、突板を貼らず「黒い塗装」の可能性もあります。

Gibsonロゴ
この個体はゴールドのロゴ。

80年製造の“Firebrand”シリーズからは“Gibson”ロゴが彫り込まれた焼き印(風)仕様になるのですが、私はウォルナットボディに焼き印ロゴの“Firebrand”The Paulをあまり見たことがありません。
※“The Paul”の話ではありませんが、ロゴの字体は年式により特徴があるそうです。
トラスロッドカバー
- “The Paul”刻印入りの専用仕様。
- 複数パターンあり。
ナット幅
42~43㎜
machine-head
“The Paul”ではナット・ワッシャーで固定する「ロトマチックタイプ」が採用されています。(後述)
machine-headの配置
配置は「L3:R3」
※上記画像“Gibson デカヘッド”を参照。
立てかけた状態のヘッドストック・トップ面、向かって…
- 向かって左側を【L】:「Left」・右利き用のギターの場合、低音弦側(4~6弦)
- 向かって右側を【R】:「Right」・右利き用のギターの場合、高音弦側(3~1弦)
…と表記するのが一般的。
取り付けの際は、弦の通す穴径に違いをもたせている場合もあるので注意が必要です。
(セット販売ならシールなどが目印)
ヘッドストック【裏面】
シリアルナンバー
シリアルナンバーより、1979年製。

「NIHON GIBSON」シール
「NIHON GIBSON」のシールは、為替が大きく変動した時代ということもあり、個人輸入・並行輸入品が横行したため、代理店を通した“正規輸入品”であることの証明なんだそうです。

このシールは、剥がすにしても残すにしても汚く残るようで、綺麗に剝がそうとすると溶剤を使用しないといけないらしく、極薄塗装に対してなら尚のこと一層如何なものかと考えあぐねています。
Machine-head/ペグ
ヘッドストックをナットで挟み固定する“ロトマチック”タイプが採用されています。
「“vintage type”に比べると重量があるので音がタイトになる」と言われていますが、それに加え、締め付けによる地盤(木材)の密度の変化も影響しているかもしれません。
ボディを強めに肘で挟み込み、ボディの振動を抑えると、音質が変わる(気がする)ように。
ペグの呼称
日本では「ペグ」のほうが一般的な呼び方ですが、正式には「Machine-head/マシンヘッド」
あえて使い分けるなら、当サイトでは以下のような認識ですが、正直『ペグ』でいいと思ってます。
- 本体総称:マシンヘッド
- 回転するつまみ:ペグ
- つまみ部分(パーツ):ペグボタン
- つまみの形状:キーストーン
クルーソン “vintage style”(上画像“黒い突板”)に比べて、ペグポストの背が高いのも特徴です。

Key-stone
ペグボタンが金属製のトライアングル・キーストーンで、個人的に大好きなポイント。
この時代のレスポールカスタムには手巻きハンドルが付いたバージョンもあったりして、見かけると気分が上がります。

リプレイスメント・パーツはGibson純正でも販売されているようです。(2025年6月時点)
改造目的で、近い形で妥協・本体無加工(ポン付け)・シャーラー(後述)互換・その他機能追加、など選択肢を広げるなら「GOTOH/後藤ガット」製で探すのが手早いと思います。
GROVER【Milk Bottle】
この個体のペグはGrover製のものが取り付けられています。

シャフト部を覆うカバーの形状から、通称“ミルクボトル”と呼ばれるこの年代の特徴。
グローバーより復刻されているようです。(型:102/カラー/V)
(2025年6月時点)
「GIBSON」刻印入り/Schaller M6/メタル・トライアングル・キーストーン
工場によるのか年式によるのかはわかりませんが、ロトマチック・“Gibson”刻印入り「シャーラー M6」仕様の個体もあります。
こちらもペグボタンはメタル・トライアングル・キーストーン。
ネジ穴の位置は水平。

※M6のネジ穴位置は大別すると3種類あるので、サイズ確認は勿論のこと、交換の際は注意が必要です。
※トライアングル・キーストーンは現在のラインナップにはない仕様のようです。(2025年6月時点)
ネック
volute
なんといっても特筆すべきは、このノーリン期特有のネックボリュート。

転倒時のネック折れ対策に一役買っていて、デザイン的にも個人的には大好きですが、現在では廃止されています。
(レスポールの“原点回帰”以外で廃止された理由は何ですか?)
ネックは3ピースのウォルナット。
こちらも捻じれ対策や剛性を高めることが目的だそうです。

“ラウンドネック”というのでしょうか?
個体差もありますが、00年代のLes Paul standard “60sスリムネック”よりもわずかに丸く、個人的には親指で支えるにも、握りこむにも安定感があります。(写真右は50sネック)
2025年時点、現行レスポールはレギュラーラインであっても、ヴィンテージ由来の“ロールド・バインディング”といわれる面取り加工が採用されているモデルもあるそうで、00sよりも握り心地はいいかもしれません。
Finger Board
エボニー指板
エボニー指板はGibsonでは主に“Les Paul custom”のような上位機種で採用される仕様。

縞も無く、色むらもほとんど見えない、黒々としたエボニー材が使用されています。木目の流れもよく見えないので板目か柾目かまではわかりません。
(高音弦側最終フレットあたりを見ると板目かな?塗ってるのかな?リッチライトではない…はず)
エボニー材は和名“黒檀”の名の通り、真っ黒な部分に価値を見出していたので、昔は大部分が廃材だったそう。
木材の中では比重が大きい部類で、密度が高く、堅い木材です。
音響特性は、以下のように言われています。(諸説あります)
- 硬質でクリア
- 低域を中心に全音域でバランスの取れた響き
- 音の立ち上がりが速い
- アタック感が強い
- 豊かなサステイン
特性だけを見ると、テクニカルプレーや歪ませた音作りと相性が良いといえます。
とはいえ、私は語れるほどの論拠となる知識や経験を持ち合わせていません。
ですので、“感触”的に“フワっとしたローズウッド”・”ツルっパキっとしたメイプル”・カチっとしたエボニー”。
「指先に伝わる木材の感触からくるイメージは、意外と音に反映されている気がしますが、どの指板材ががお好みですか?」といった具合でしか話せません。
エボニー指板のデメリットは亀裂が入りやすいこと。
バインディング
“studio”や“special”同様、廉価モデルなので“ネック・バインディング”はありません。
フレットエッジ・バインディング
“フレットエッジ・バインディング”はGibsonの象徴であり、職人の腕の見せ所です。
バインディングの目的は装飾としてだけでなく、車におけるバンパーのように衝撃を吸収する役割も担っているようです。
- 豪華に見える
- フレットエッジが指に引っかからない
- ネックの滑りがよくなるので、なめらかにスライド/フィンガリングができる。
- 指板とバインディングの隙間に1弦が甘噛みされることもある。(弦落ち)
ただやはり個人的にバインディングは装飾的な意味合いが強く、“フレットエッジ・バインディング”は、フレット両サイド1mmほどは機能しなくなりますし、弦落ちしやすいというデメリットもあるので、激しいプレイヤー目線、しかも弾き倒す前提のステューデントモデル(思い入れや相場は別)なら必ずしも必要とはいえません。
矛盾しますが、塗装と手触りの相性もあるので、滑らかだからいいとも限りません。
インレイ
パール・ドットインレイが1フレットから施されています。
1フレットにインレイをもつ仕様は、通常レスポール・シリーズの中では“Les Paul Custom”だけのものです
“Les Paul Custom”の場合は「ブロック・インレイ」ですが。
The Fretless Wonder
この年代の特徴でもある、背が低く、幅の広いフレットが打たれています。

「フレットレスワンダー」と呼ばれ、ジャズギタリスト向けに、スムースなフィンガリングに焦点をあてて開発されたそうです。
あまり好意的な意見を目にしない仕様ではありますが、タッチは個人の感覚ですし、むしろ不評だけが目立つので、可もなく不可もなく程度で“慣れの問題”かもしれません。
ただ押弦の力加減や、面で滑る感触が「確かに妙」であるのは事実です。

背の低さに対して違和感は揺らぎませんが、“The Paul”の場合、密度が高く、硬く滑らかなエボニー指板と相まって「弦落ちしない“フレットエッジ・バインディング”」と考えれば、むしろバインディング無しのために開発されたのではないかと思えるほど合理的。と自分に言い聞かせています。
想定されるデメリットは、摺り合わせ・リフレットまでの寿命が短い可能性が高いこと。
まとめ【ヘッド~ネック】
廉価ではありますが、The Paulの“ヘッド~ネック”部は“Les Paul Custom”の仕様を踏襲しているといえます。
- ラージヘッド
- エボニー指板
- 1フレットからのインレイ
S©ALETONE的・妄想似非科学【ネック編】
S©ALETONE的・妄想似非科学【ネック】
- Burst以外、ネックの体積は同一と仮定
- ThePaul以外、ボディの体積は同一と仮定
- ロングテノン(ディープジョイント)・ウエイトリリースも密度として
- Burst:ハカランダ+ホンジュラス・マホガニーの合板・スモールヘッド
- 54年製“Les Paul Custom”:エボニー+ホンジュラス・マホガニー・ラージヘッド
- 70s“Les Paul”:ローズウッド+メイプル・ラージヘッド
- The Paul:エボニー+ウォルナット
S©ALETONE的・妄想似非科学【口実】
- 傾向・相関を調べるなら、比較できる個体が必要。
- 枯れた音・煌びやか・柔らかいなどの定義づけと尺度が必要。
- 基準となる個体・一定の環境が必要
仮説と方法論の見通しが立ったとしても、現実的ではない財力と人員が必要です。
という逃げ口上で終えときます。
個体差
- 繊維の流れで異なる硬度
- 接着時の圧力
- 組み付けの力加減
- シーズニング
- 製造時の精度と将来の狂い
- 加工精度・組付け精度
たった1°の角度の誤差であっても、わずか約57.3cm(指板くらい)の距離で1cm の狂いが生じる。
個体差以前に、例えば同一個体でも、塗装を剥ぐという行為だけで、硬度・比重・体積・質量などが全体的に変化するといえる。
それはウェザーチェック・レベルでも同じこと。
結果はどうあれ良くも悪くも全てのバランスが狂う。
何か1つが変わったとは言えないし、きっと答えが出ることも無い。
あえて言うなら体に伝わる感触が変化する。
迷いの多い私には、何か1つの異なる要素だけで音の違いとするのは不可能です。
そもそも出会ってしまった「目の前にある理想の個体」に、その先を期待するのは野暮ですしね。
Firebrand
Firebrandシリーズとは
「Firebrand」は81年から新たに加わったシリーズで、意味は「火種」や「扇動者」。
The Paul・The SG・335-sと、その“Deluxeモデル”に付けられた名称で、特定の形状(Les Paul)/カテゴリー(ES)/グレード(special)で区別するよりは、「総合的な“仕様”」に対して付けられている印象です。
一時“V”や“explorer”も発売された“melody maker”のような括り。
Firebrandシリーズの特徴
当初は突板なしのヘッドストックに“Gibson”ロゴが彫り込まれた焼き印(風)仕様でしたが、The Paul Deluxeでは“Firebrand”を冠していても、レスポールの廉価モデル同様の黒いヘッドにゴールドのデカールを施した個体もあったりします。
仕様の差異が判然としないので、トラスロッドカバーにある“Firebrand”の刻印が目印。
ウォルナットボディに焼き印ロゴのThe Paul(Standard) “Firebrand”も稀に存在するようです。
ただよく見かける、焼き印ロゴでナチュラルカラーの“Firebrand”のほとんどは、マホガニーボディの「The Paul “deluxe”」に黒ペンキの飛沫を散らしたようなものである気がします。
Deluxe
The 〇〇 Deluxe
Deluxeでは、ボディ&ネック材はマホガニー材が採用されています。
リフィニッシュでなければ、カラーバリエーションは豊富。
トラスロッドカバーの刻印には、“LP Firebrand” や“The Paul deluxe”など複数パターンありますが、そもそも“deluxe”と“Firebrand deluxe”の違いが年式以外にもあるのかすらわからないので、同じものと認識しています。
ヘッドストックとブランドロゴは、突板なしに焼き印風ロゴ。もしくは、黒いヘッドトップにゴールドロゴ。
カラーバリエーション
フィニッシュ・カラーについて、以下はカタログ情報でもなく、私が“The Paul”を探し回っていた時に出会った、S-1/marauder‐The Paul/deluxe/firebrand‐sonex-180/invader/GK-55あたりの混同した記憶だけが頼りなので参考程度にしてください。
基本となるナチュラルはいずれもアンティーク家具のような、極めて薄い塗装でした。
- アンティークナチュラル(艶消し)
- 艶ありナチュラル
- ナチュラルに黒い飛沫
- sun-burst
- Inverness green
- Cardinal red
- Pelham blue
- silver burst
- gold burst
おまけ:70s 純正ハードケース【ロケットケース/チェーンソーケース】
“The Paul”には、通称「ロケットケース」「チェーンソーケース」と呼ばれるレスポール専用の純正ハードケースが付属していました。
こちらもGibsonからアップグレード版が販売されており、正式名称は「プロテクターケース」のようです。(2025年時点)
ノーリン期のプロテクターケースには2型あり、グレード(価格)による仕様の違いで分けられています。
当サイトでは便宜上、手触りのイメージから、低価格版を「ロケットケース」、上位版を「チェーンソーケース」とします。
レトロとも近未来的ともいえない独特な形状は、70年代Gibsonの個性を象徴するアイテムの1つとしても、たいへん魅力的です。
「ロケットケース」
今回付属のケースは低価格版「ロケットケース」

ウレタンのように少し柔らかい素材で作られており、一体成型で幅広のラッチロックが特徴です。

「ロケットケース」は長期的にみると消耗品らしく、ラッチの爪がヘタってくるとロックが効かなくなるようです。
ネックレストの黒い部分は小物入れになっています。
この個体の内張りは赤のモールド。

“Gibson”ロゴがエンボスで入れられています。
「チェーンソーケース」
参考までに上位版「チェーンソーケース」も。
後付けでなければ80年製のギターに付属していました。
チェーンソーケースは、「ロケットケース」に比べて一回り大きく、材質も硬くなっています。

内張りは青でした。
ラッチロックも金属製に変更され、より堅牢になっています。
それなりに使用感もあるので表面はヤスリのようにザリザリしていて、お世辞にも手触りが良いとは言えません。
先ほど「ロケットケース」はロック機構が弱点のように書きましたが、実はこの写真のチェーンソーケースはラッチの金具自体が1つ紛失しています。扱い方ひとつで簡単に物は壊れます。
当時の木製ケースに比べて防御力は申し分なく、ハードケースとして正解かもしれませんが、重い・硬い・大きい・分厚い、肌触りが悪い、など手持ち運搬するには不向きな点が目立つので、個人的には「ロケットケース」のほうが扱いやすく好みです。

ロゴは別プレートで、本体に接着剤で貼られています。
最後に:『剛毅木訥、仁に近し』
以上が、私の紹介した「Gibson“The Paul”」の詳細です。ちゃんとポイントは回収できていたでしょうか?
- 薄い塗装
- 理想的な重量
- 厳選された木材
- 材を活かすピックアップ
長々と書きましたが、結局のところ、自分の理想の音・理想の楽器を決めるのは、自分自身でしかありませんし、個体差のある製品の評価はその個体にのみ適用されるものです。
思い込みの設計思想であれ、ニッチな音響特性であれ、私は“このThe Paul”を抱えると、ふとした瞬間に垣間見える「昼行燈のしたたかさ」に安心感を覚えます。
たったそれだけです。
ここまで書いてみてわかったことは、私が“このThe Paul”を好きな理由は語り尽くせないほどあったにせよ、「銘器のひとつ」とする理由は、意外と上の一文だけで完結してしまうということです。
伝統の先に革新があるのか、そもそも革新的な伝統だったのか、Gibson社のことはわかりません。
希少個体・不人気機種・アタリの個体・間違いなく検品漏れ。
ノーリン期に関わらず、企業に関わらず、特定の時代に関わらず、製品である以上少なからず色々あると思います。
「何を以て“vintage”か?」の言及は避けますが、“楽器”として即戦力となり得る“vintageの資質”を“The Paul”は秘めていると私は考えます。
孔子の教えに「剛毅木訥、仁に近し」とありますが、私が“The Paul”にもつ印象は正にそれです。
S©ALETONE.のひとりごと:『巧言令色、鮮し仁』
『剛毅木訥、仁に近し』の対とされる言葉に『巧言令色、鮮し仁』があります。
自戒の念を込めて。
このブログも“他人の意見”ですので、真に受けず、暇潰し程度で、ご放念いただけると幸いです。
ギターはほぼ自己完結できる趣味です。自分の理想の楽器、理想の音を求めればそれでいいと思います。
プレイヤーであれコレクターであれ理想に出会うことができればそれは素敵なことです。
もし最後まで読んでくださった方がいらっしゃるのなら感謝申し上げます。ありがとうございます。