はじめに:ペグ交換でギターの音が変わるって本当?
ギターの「ペグ(マシンヘッド)」は、チューニングを支えるだけでなく、音のキャラクターや演奏性にも影響する重要なパーツです。
この記事では、初心者にもわかりやすく「クルーソン」タイプと「ロトマチック」という代表的なペグの違いや、交換時の注意点を解説します。
クルーソン(Kluson)とロトマチック(Rotomatic)は、ギターのペグ(マシンヘッド)の代表的な2タイプで、それぞれに個性とメリットがあります。以下に違いをまとめてみました。
どちらが「良い」かは、あなたのギターのスタイルや求める音次第です。
ヴィンテージトーンを重視するならクルーソン、ライブやレコーディングでの安定性を求めるならロトマチックという選択でもいいかもしれません。

クルーソン(Kluson)の特徴とメリット・デメリット
クルーソン・ペグとは
“クルーソン・タイプ”や“クルーソン・ペグ”と言っても伝わりますが、クルーソン社(Kluson)に代表される「vintage style」や、そのサードパーティ製の「ヴィンテージ・タイプ」と言った方が幾分正確です。
当サイトでは、クルーソン(Kluson)の「vintage style」を例に紹介します。
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クルーソン(Kluson)「ヴィンテージスタイル」とは
クルーソン(Kluson)の「ヴィンテージスタイル」とは、1950〜70年代のギブソンやフェンダーなどに使われていたクラシックな外観と構造を再現したマシンヘッドのことです。
現行モデルでは、ヴィンテージ感を保ちつつ、現代の演奏環境に合わせた仕様に変更されています。
ヴィンテージクルーソン・ヴィンテージスタイルの特徴
- オープンギア構造:ギアがむき出しで、メンテナンスしやすく軽量
- 簡易密閉型:ギアがプレスした鉄板で覆われています
- ペグボタンの形状:樹脂製の「オーバル型」や「チューリップ型」が多く、経年で黄変やシュリンク(縮み)が起こることも
- シングルライン刻印:ペグの背面に「KLUSON DELUXE」と一列で刻印されているのがヴィンテージの証
- ブラスポスト使用:音の立ち上がりが良く、倍音が豊かになる傾向
- ギア比は14:1前後:現代の高精度ペグよりは粗めだが、操作感は軽快
よく見られるヴィンテージ仕様
項目 | 内容 |
---|---|
刻印 | シングルライン(KLUSON DELUXE) |
ペグボタン | 樹脂製、シュリンクするタイプもあり |
ギア構造 | オープンギアまたは簡易密閉型 |
使用ギター | Gibson Les Paul、ES-335、Fender Stratocasterなど |
音の傾向 | ウォームで倍音豊か、軽快なレスポンス |
ちょっと豆知識
- 「シュリンクするタイプのクルーソンペグ」は「バースト・レスポール」の特徴になっていることもあり、経年劣化で縮む樹脂ボタンを忠実に再現した復刻モデルは見た目のリアルさを求めるマニアに人気。
- 近年はKluson社が精度の高い復刻版を多数リリースしており、ヒストリック・リイシューモデルのアップグレードにも使われています。
ヴィンテージスタイルのクルーソンは、音だけでなくルックスにもこだわるギタリストにとって魅力的な選択肢です。
クルーソン・デラックスの現行モデルには、15:1のギアレシオが採用されているものが多く存在します。
これはヴィンテージスタイルを保ちつつ、チューニング精度を向上させた改良版です。
クルーソン・デラックスのギアレシオについて
※ギアレシオについては後述します。
- オリジナルのヴィンテージモデル(1950〜60年代)は 14:1 が主流でした
- 現代の復刻版や改良モデルでは、15:1 にアップグレードされているものが多く、より安定したチューニングが可能です
- 例えば、Kluson KD-3P-NP などの「3オンプレート」タイプ(3連ペグ)は、15:1ギア比を採用しており、見た目はヴィンテージでも性能は現代仕様
まとめ
モデル年代 | ギアレシオ | 備考 |
---|---|---|
オリジナル(1950s〜60s) | 約14:1 | 軽快な操作感、やや粗めの調整 |
現代復刻・改良版 | 15:1 | 精度向上、安定性アップ |
クルーソンペグの特徴とメリット・デメリット
目的に依るので、一概にメリット・デメリットともいえませんが。
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クルーソンタイプの特徴
- 軽量で見た目がレトロ:鉄板をプレスしたカバーで覆われていて、クラシカルな雰囲気
- ヴィンテージ感のあるデザイン:1940年代に登場し、クラシックな見た目で、オールドギターなどに多く使われています
- スリット付きポスト仕様もある
- 衝撃に弱い:構造が繊細で、変形しやすい傾向があります
- 倍音が豊かでナチュラルな音
メリット:音の傾向
- 軽い分、楽器に使用されている木材本来の響きを活かし、倍音成分が豊かで、優しくて繊細な音
- サステイン(音の伸び)は控えめ:音の伸びよりもナチュラルな響き重視
- 柔らかく広がるウォームなトーンはアコースティックやクリーントーンにぴったり
デメリット
- チューニングが狂いやすい傾向:構造がシンプルな分、経年劣化でガタつきが出やすい
- 衝撃に弱い:軽量な分、変形しやすく耐久性に劣る
- サステイン(音の伸び)が短め:音の伸びよりも自然な響き重視
ロトマチックペグの特徴とメリット・デメリット
目的に依るので、一概にメリット・デメリットともいえませんが。
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ロトマチックタイプの特徴
- 1950年代にグローバー社が開発
- 高い耐久性と安定性
- 重量があり頑丈:ダイキャスト構造で衝撃にも強く、耐久性が高い
- チューニングの安定性が高い:トルク調整が可能で、経年劣化にも強い構造
- トルク調整可能:ペグの回し心地を調整できるモデルもあります
- モダンな見た目:密閉型でホコリが入りにくく、メンテナンス性も高い
メリット:音の傾向
- パーツが重く頑丈な分、楽器に使用されている木材本来の響きは抑えられ、タイトで冷たい印象の音になりやすい傾向
- サステイン(音の伸び)が長い:重さが音の伸びに貢献し、音に力強さや太さが加わる
- 音が太くタイトなため、高ゲインのロックやメタルなど、歪みを使うジャンルに向いている
デメリット
- 木の鳴りが抑えられ、芯のある冷たい印象の音になりやすい
- ヘッド落ち:やや重いので、ヘッドの重量バランスに影響することも
- 見た目がモダンで好みが分かれる:ヴィンテージ志向の人には好みが分かれる
ざっくり比較表
特徴 | ヴィンテージタイプ | ロトマチックタイプ |
---|---|---|
重量 | 軽い | 重い |
耐久性 | 衝撃に弱い | 頑丈で長持ち |
見た目 | ヴィンテージ風 | モダンで密閉型 |
チューニング安定性 | やや不安定 | 安定している |
音の傾向 | ナチュラルで開放的 | 太くてタイト |
サステイン | 短め | 長め |
どちらが良いかは、ギターの種類や演奏スタイルによって変わります。
どちらが「良い」ではなく、どんな音やスタイルを目指すかで選ぶのがポイントです。
主なロトマチックペグブランド一覧
ブランド名 | 特徴とおすすめポイント |
---|---|
GROVER | アメリカの老舗ブランド。ギブソンやマーチンなどに純正採用されることも多く、高精度な18:1ギア比やロッキング機能付きモデルが人気。 |
GOTOH | 日本の高品質パーツメーカー。SG381シリーズなどが定番で、精度・耐久性・価格のバランスが良く、国内外で高評価。 |
SCHALLER | ドイツ製。加工精度が非常に高く、ロック式ペグやカスタムモデルも豊富。プロユースにも対応。 |
Wilkinson | イギリス発。E-Z-LOK機構など独自の設計が特徴で、コスパに優れたモデルが多い。 |
Hipshot | 高精度なチューニングと取り付けの柔軟性を両立Grip-Lock機構やユニバーサルマウントプレート、ペグの高さが段階的に変化するスタガード仕様など |
それぞれのブランドに「ギア比」「ネジ穴位置」「配列(L6や3+3)」などの違いがあるので、ギターの機種に合ったものを選ぶのがポイントです。
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ギア比とは?
ギア比とは、ペグを1回転させたときにポスト(弦を巻く軸)が何分の1回転するかを示す数値です。
例えば「18:1」の場合、ペグを18回回してようやくポストが1回転します。つまりギア比が高いほど微調整がしやすく、チューニング精度が高くなるということです。
クルーソンタイプのギア比
- 一般的に 14:1 ~ 15:1 が多い
- ヴィンテージスタイルを重視しているため、ギア比はやや低め
- 微調整はやや難しいが、操作感が軽くて素早いチューニングが可能
ロトマチックタイプのギア比
- 多くは 18:1 ~ 21:1 と高め
- 精密なチューニングが可能で、ライブやレコーディングに向いている
- トルク調整機能付きのモデルもあり、巻き心地をカスタマイズできる
ギアレシオによる比較まとめ
項目 | ヴィンテージタイプ | ロトマチックタイプ |
---|---|---|
ギア比 | 14:1 ~ 15:1 | 18:1 ~ 21:1 |
チューニング精度 | 普通 | 高精度 |
操作感 | 軽くて速い | 重くて細かい |
どちらを選ぶかは、求める操作感と音楽スタイルによります。
ヴィンテージ感や軽快な操作を重視するならクルーソン、精密さと安定性を求めるならロトマチックがオススメです。
ペグ交換による音の変化を初心者向けに解説
クルーソンからロトマチックに交換すると、音の印象が大きく変わります。
交換による音の変化(ざっくりまとめ)
項目(音の傾向) | クルーソン | ロトマチック |
---|---|---|
音の印象 | 柔らかく広がる | タイトで力強い |
倍音の量 | 多い | 少なめ |
サステイン | 短め | 長め |
音の温度感 | 暖かい | 冷たい |
「ふんわりした音」から「しっかりした音」へ変化するイメージです。
音の好みや演奏スタイルによって、どちらが合うかは変わります。
ペグ交換時の注意点と失敗しないコツ

ギターのペグをクルーソンからロトマチックに交換する作業は、見た目以上に繊細で注意が必要です。
当サイトは素人の所業を自認しているので、基本的にポン付けできる改造しかしません。
元に戻すことのできない改造、特にギター本体木部に手を加えることは推奨しません。
最大の費用対効果・時間対効果はプロに任せることだと思っております。
当サイトは一切責任を負いませんので、自己責任で行ってください。
以下は改造にあたっての最低限の判断材料として、押さえておくべきポイントをまとめています。
1. 穴のサイズに注意
ペグ取り付け穴のサイズが違う
※穴の拡大加工が必要になります。
初手はリーマー(手動で穴を広げる工具)を使うのが比較的安全
その後ドリルで、ヘッドに垂直に、ストレートな穴をあけなければなりません。
- クルーソン:取り付け穴の直径は約8.5mm前後
- ロトマチック:必要な穴の直径は約10mm
逆に、ロトマチックからクルーソンに変更する場合は、隙間を埋める「コンバージョン・ブッシュ」というアダプターがあります。
各社、微妙に直径が異なるようですし、ギター本体の個体差もあるので、相性は確認してください。
どちらにせよ、0.1mm以下の作業となります。
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2. ヘッドの塗装や木材へのダメージ
- 穴を広げる際に塗装や突板、木材が割れるリスクあり。
- 力を入れすぎるとヘッドが割れることもあるので慎重に。
↓ちなみにリーマーとはこのような工具です。
センターが出ず、楕円になるかもしれないこと、穴を「円錐」に拡張することにも留意しておかなければなりません。
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↓糊による塗装面へのダメージを極力抑える“超弱粘”マスキングテープ
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3. ネジ穴の径や位置が合わない
- ロトマチックのペグは固定ネジの径や位置が異なることが多い
- 元のネジ穴が使えない場合は、埋め木して新しい穴を開ける必要あり
- 下穴なしでネジを締めると、木が割れる危険性があります
4. 音の変化も考慮
- ロトマチックは重いため、音がタイトでサステインが伸びる傾向
- ギターのバランスや好みの音に合わせて選ぶ
交換前のチェックリスト
作業場を確保しておかないと、ヘッドだけでなく、ボディの破損や事故を起こす恐れがあります。
項目 | チェック内容 |
---|---|
ペグ穴のサイズ | 拡張が必要か確認 |
ネジ穴の位置 | 合うかどうか確認 |
ヘッドの材質 | 割れやすい木材か |
工具の準備 | リーマー、ドライバーなど |
音の好み | タイト or ナチュラル |
ペグ交換は見た目以上に繊細な作業ですが、音と操作性が劇的に変わる楽しい改造でもあります。
ただし、傾向から予想するしかないので、思い描いたとおりの結果になるとは限りません。
もし工具や作業に不安がある場合は、楽器店やリペアショップに相談するのが得策です。
まとめ:あなたに合ったペグを選ぼう!
どちらを選ぶべき?
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目的 | おすすめタイプ |
---|---|
ヴィンテージなルックスと木の鳴り重視 | クルーソン |
チューニング安定性と機能性重視 | ロトマチック |
こんな選び方もおすすめ
好み・演奏スタイル | ペグのタイプ |
---|---|
ナチュラルで柔らかい音好き | クルーソン |
太くて安定した力強い音が欲しい | ロトマチック |
どちらも素晴らしい選択肢ですが、ギターのキャラクターや演奏スタイルによってベストな選択は変わります。